パリの街角散歩です。カタツムリのようにゆっくりと迂回しながら、そして時間と空間をさまよいながら歩き回ります。


2015年10月11日日曜日

散歩R(4) ミルトン通り Rue Milton, 9e(9区サン=ジョルジュ地区)


(c) Google Map Streetview
1, rue Milton, 9e 

 ラマルティヌ通りの角を左折するとミルトン通りに入る。ゆるやかな登り坂の落ち着いた街並みである。1番地の建物の入口を見ると足元の傾斜がはっきりとわかる。
(c) Google Map Streetview
Rue Milton, 9e 

















 ミルトンの名前は英国の大詩人ミルトン(John Milton, 1608-1674)ということだが、直接フランスやパリに関係がない有名人名が採用されるケースにあたる。文豪ではイタリアのダンテ、スペインのセルバンテス、ロシアのトルストイなどの名前の通りはパリにあるが、ドイツのゲーテやイギリスのシェークスピアはない。

 ミルトンは17世紀の清教徒革命の時代の人物だが、その時代の混乱もあったためか、文学的な作品はほとんどなく、クロムウェルの政府の秘書官のような仕事についていた。しかし44歳で失明したため、隠棲して口述による創作に打ち込み、英国で至高の叙事詩といわれる『失楽園』(Paradise Lost)を59歳のときに完成させた。これは、アダムとイヴの楽園追放の物語だけではなく、旧約聖書の創世記にもとづいた堕天使(=悪魔)を神と対置させて描いているという。


Gustave Doré Illustrations - Digital Collections -
 University at Buffalo
(←)左掲は、19世紀の版画家ギュスターヴ・ドレ(Gustave Doré, 1832-1883) による「失楽園」の挿絵の一枚である。ドレは50年という短い人生において、天賦の才である版画を少年のときから独学で身に着け、非常に多くの新聞や雑誌の挿絵を制作し続けた。一時期ロンドンに渡り、新聞や雑誌に大都市における下層階級の民衆の生活の悲惨さを身をもって取材しながら、版画によってさらけ出すというレアリスム精神を持っていた。
同時にこの「失楽園」や「聖書」など、壮大なスケールと幻想的な深淵を目の当たりに表わす彼の表現力に多くの支持者を得て、次々と出版された。