パリの街角散歩です。カタツムリのようにゆっくりと迂回しながら、そして時間と空間をさまよいながら歩き回ります。


2016年2月15日月曜日

散歩R(19-2) フランス六人組の発足の地、作曲家ミヨーの住居 Lieu de naissance du "Groupe des Six"(9区サン=ジョルジュ地区)

エネ通り9番地の家は横丁の角になっていて、そこから短いポール・エスキュディエ通りがある。ポール・エスキュディエ(Paul Escudier, 1858-1931)は弁護士出身で、パリ市議会議員を経て、セーヌ県選出の国会議員となった。おそらくこの付近が住まいだったと想像する。この通りの番地の付け方が普通とは逆になっているのが不思議だ。一般的にパリの東西に走る通りは、東端から見て左側が1番地、右側が2番地となっていくのだが、この通りは西端から付けられている。従って5番地は通りの北側になっている。


☆ポール・エスキュディエ通り5番地 (5, rue Paul Escudier, 9e) 
《フランス六人組発足の地、作曲家ミヨーの住居》 (Lieu de naissance du "Groupe des Six")
(c) Google Map Streetview
 5, rue Paul Escudier, 9e

作曲家のダリウス・ミヨー(Darius Milhaud, 1892-1974) は南仏の裕福なユダヤ人家庭に生まれ、両親の影響で幼い時から音楽に親しみ、1909年にパリ音楽院に入った。
第一次大戦の最中の1916年頃、パリ音楽院で親しくしていた仲間の6人が毎週土曜日にミヨーの自宅に集まり、歓談する習慣となっていた。この集まりには同年代の詩人ジャン・コクトー(Jean Cocteau, 1889-1963)が加わり、ドビュッシーの印象主義やワーグナー崇拝の流れに支配されたフランスの音楽界に、新しい息吹きを創り出そうとする考えをもとに熱心な議論が進められた。六人組はミヨーの他に、年長のルイ・デュレー(Louis Durey, 1888-1979)、スイスから来たアルテュール・オネゲル(Arthur Honegger, 1892-1955)、女流作曲家のジェルメーヌ・タイユフェール(Germaine Tailleferre, 1892-1983)、パリ育ちのフランシス・プーランク(Francis Poulenc, 1899-1963)、早熟な作曲家ジョルジュ・オーリック(Georges Auric, 1899-1983)だった。いずれも20代の作曲家(プーランクとオーリックは当時17歳)だった。

「六人組」(Groupe des Six)の名前が初めて出たのは、その4年後の1920年、音楽評論家のアンリ・コレが彼ら全員によるピアノ曲集『六人のアルバム』(Album des Six)の発表に際して、雑誌の評論で「ロシアの国民楽派五人組」(Les Cinq russes)に対比させた「フランスの六人組」(Les Six français)と呼んだ時である。
J.E.Blanche : Le groupe des Six (1921)
@Rouen, Musée des Beaux-Arts

実際は6人とも各々の作風にはそれぞれ独特のものがあり、六人組の知名度が上がることで、互いの交遊を保ちながら個々の作曲家として大きく成長し、20世紀のフランス音楽界を代表する存在となって行った。

(→)右掲の絵は、画家ジャック=エミール・ブランシュ(Jacques-Émile Blanche, 1861-1942)が1921年に描いた『六人組』である。中央の女性はメンバーではないピアニストのマルセル・メイエ(Marcelle Meyer, 1897-1958)だが、同じパリ音楽院の出身で賛同者の一人である。メンバーの紅一点タイユフェールは左下に半身だけ描かれている。その上がミヨー、その横に横顔だけのオネゲル、画面奥に眼鏡のデュレー、右側に座っているのはオーリック、その上にプーランク、右上端にコクトーがいる。六人組の全員が20~30代の若々しい頃の姿をとらえた画像は貴重である。

この年の6月にはバレエ・スエドワから依頼された『エッフェル塔の花婿花嫁』(Les Mariés de la tour Eiffel)が初演となった。台本をコクトーが書き、当初は六人組全員で音楽を分担することが決まったが、土壇場でデュレーが不参加を表明し、急遽穴埋めの作曲をタイユフェールとミヨーとで行い、間に合わせた。デュレーはこのあと六人組から完全に離脱する。

◇参考Youtube - バレエ『エッフェル塔の花婿花嫁』全曲
Les Six: Les Mariés de la Tour Eiffel (Complete ballet) (1921)  
https://www.youtube.com/watch?v=7zc2FirtReE



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