(c) Google Map Streetview 15, rue Chaptal, 9e |
《メグレ警視若年期の張込み場所》
15番地はエネ通りとシャプタル通りが交わるT字路の東角になっている。そこに「ラネクス」(L'Annexe)という名前のやや古びたレストラン・バーがある。住宅街には珍しくぽつんと立っている店である。この店はジョルジュ・シムノン(Georges Simenon, 1903-1989)が書いた《メグレ警視シリーズ》の中の一作『メグレの初捜査』(La première enquête de Maigret)で、まだ駆出しのメグレが朝から夕方まで店の中から張込みをした場所として描かれている。
事件が起きたのは通りの角の反対側の館、つまり17番地(小説では17番地B)に住む富豪の一族で謎の失踪が起きたらしいということで、この店の窓際のテーブルに座り、屋敷の住人の動向を見張るという設定である。
シムノンは事件の現場となる街角を作品ごとに実地に細かく取材したようで、実在の家や店舗をその事件と結びつけて描くことを必ず行っていた。この店の名前は小説中では《古きカルヴァドス》(Vieux Calvados)となっている。
(c) Google Map Indoorview 15, rue Chaptal, 9e |
「《張込み》をするにも、人通りや店舗やカフェのお蔭で簡単な通りは多いが、シャプタル通りはそうではなかった。短くて幅広く、商店がなく、人や車もまるで通らなかった。」
(Il existe des rues où il est facile de se "planquer" grâce au mouvement, aux boutiques, aux cafés, mais la rue Chaptal n'est pas de celles-là, courte et large, sans commerce et, pour ainsi dire, sans passage. (c)Georges Simenon : La première enquête de Maigret ; Chap.3)
「幸いにも《古きカルヴァドス》が開いたところだった。エネ通りとの角にあって、この通りで身をひそめるには唯一の場所だった。」
(Heureusement que le Vieux Calvados venait d'ouvrir. C'était le seul endroit de la rue où trouver refuge, au coin de la rue Henner, ... (c)Georges Simenon : La première enquête de Maigret ; Chap.3)
☆シャプタル通り7番地 (7, rue Chaptal, 9e)
門飾りの花の浮彫がモダンな感じで目を引く。建築家アンリ・プチ(Henri Petit, 1856-1926)という銘が壁に刻まれている。この人は19世紀末以降、北アフリカのアルジェに渡って現地で長く活躍したので、この家はその直前の若い頃の設計と思われる。
(c)Photo Emoulu bc20a, 2013 |
☆シャプタル通り3番地 (3, rue Chaptal, 9e)
狭いながらも装飾的なベランダの手すりが特徴で、この通りの中でも丁寧な造りの建物である。
(c)Photo Emoulu bc21a, 2013 |