パリの街角散歩です。カタツムリのようにゆっくりと迂回しながら、そして時間と空間をさまよいながら歩き回ります。


2015年12月27日日曜日

9区サン=ジョルジュ地区(13-2)女優マリー・ドルヴァルの家

☆サン=ラザール通り44番地 44 rue Saint-Lazare, 9e
Marie Dorval dans le rôle de
Marion de Lorme, héroïne du drame de
Victor Hugo; Documents iconographique
@BnF  Gallica
《女優マリー・ドルヴァルの家》

マリー・ドルヴァル(Marie Dorval, 1798-1849)の名前はロマン主義文学における劇作品の革新に深く結びついている。彼女は俳優の両親のもとに生まれたが、父親は妻子を見捨てて出奔し、母親は病死し、親戚に育てられながら子役で舞台に立った。16歳で結婚したが、夫も5年後に旅先で病死した。彼女は20歳で2人の子供を産みながら、未亡人となった。地方の劇団で活動しているうちにパリのポルト・サン=マルタン座との契約を得てパリに出た。
彼女が女優としての名声を確立したのは1827年29歳
のときで、その演技に伝統的な古典派の芸術性よりも感受性あふれる性格表現と情熱の発露がまさっていたことで、パリの観衆の熱烈な支持を得た。
(→)右掲は、ヴィクトル・ユゴー(Victor Hugo, 1802-1885)の5幕の韻文劇『マリオン・ドロルム』の主役として1831年に初演された時のマリー・ドルヴァルの姿である。当時のロマン派劇作家としては、ヴィクトル・ユゴーが『クロムウェル』(1827)、『エルナニ』(1830)、『マリー・テューダー』などでロマン主義運動の先頭に立ち、アレクサンドル・デュマ(Alexandre Dumas, 1802-1870)も『アンリ三世とその宮廷』(1829)、『アントニー』(1831)などで競い合った。マリー・ドルヴァルはこれらの戯曲の公演でそのほとんどの主役となった。一時期、デュマとは愛人関係があったが、その後彼に紹介されたアルフレッド・ド・ヴィニー(Alfred de Vigny, 1797-1863)と熱烈なかつ波乱に満ちた恋愛関係となり、1838年まで続いた。

Rue Saint-Lazare, n° 44 : Maison habitée par Mme Dorval, 1837 :
estampe / APM [Potémont] ; Dessin de M. Régnier
ちょうどこの時期に彼女はこの44番地の家に住んでいた。(←)左掲は1837年当時の石版画で、有名人はその肖像画と共にその住まいも好んで紹介されたものと思われる。まだまだ鄙びた地方都市の一軒家という風情である。

実は、彼女の肖像画も沢山出されたが、正直「美貌の女優」と言えるものはほとんどなく、(大体が怖そうなキツイ顔で)上掲のものが「最良」とされている。ユゴーは彼女を評して「美人じゃない、彼女は美人以上だ!」(Elle n'est pas belle ... elle plus que belle!)と語ったという。しかし、たとえ美しくなくともその舞台芸術は「恋多き女性」(femme amoureuse)の伝説と共に歴史に語り継がれている。
(c) Google Map Streetview,
44 rue Saint-Lazare, 9e

(←)左掲は現在のサン=ラザール通り44番地の様子である。ほとんど特徴のない普通のビルで目立たない。入口の横に「パリの歴史」(Histoire de Paris)と書かれた史跡案内板が設置されている。これは言うまでもなく「この場所に女優のマリー・ドルヴァルが住んでいた。」という内容が書かれている。
単純にボートをこぐ櫂のような形をしている。この表示板は、現在制作者から厳しい著作権上の制限を受けていて、表示板を直接的な対象物として画像を掲載するのを禁じている。ただし、この画像のように家の建物を写したときに「たまたま」一緒に写ってしまった、という程度ならば大目にみてもらえるという判断が示されている。

*参考サイト:Panneau Histoire de Paris(仏文)
https://fr.wikipedia.org/wiki/Panneau_Histoire_de_Paris





*参考Link :100年前のフランスの出来事: 戯曲「マリオン・ドロルム」の再演 (1907.04.22)
http://france100.exblog.jp/5221951/


*参考サイト:Breizh Femmes - Histoire(s) - Marie Dorval(仏文)
http://www.breizhfemmes.fr/index.php/10-histoire-s/107-histoire-s-marie-dorval



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