ユーロプ地区(Quartier de l'Europe) の境界にあたるリエージュ通りに入る。リエージュ(Liège)はベルギー東部の中都市で、人口約20万人。ナポレオン時代にフランスに併合されていたが、その後オランダ領を経て1830年にベルギーの一地方として独立した。1914年に第一次大戦が勃発し、ドイツ軍がベルギー経由でフランスに進攻する作戦においてリエージュを攻めたが、頑強な抵抗に遭い苦戦を強いられた。フランスはその栄誉をたたえて、パリのこの通りを「リエージュ通り」と変えることに決めた。元の通りの名前は「ベルリン通り」だった。
サン=ラザール駅の北側一帯の地域では、ヨーロッパの主要都市名が通りの名前としてつけられている。パリの通りの名前の表記法は、大きく分けて ''rue xxx'' と ''rue de xxx'' の2種類に分けられる。 どういう場合に de が入るのかが疑問である。多少の例外はあるが、地名(例:ポントワーズPontoise)、地方名(例:ノルマンディ Normandie)、あるいは普通名詞(例:平和 la Paix)を伴うものは、de が付けられる。また軍人の「~将軍」などの階級 (Général, Maréchal, Commandant)がついた人名の場合も de を伴う。
逆に人名(例:エルネスト・ルナン Ernest Renan)、偉人(例:ヴィクトル・ユゴーVictor Hugo)、聖人(例:聖ヴァンサンSaint-Vincent)などは、貴族であらかじめ de が入っている人を除けば、de を伴わずに直接 rue xxx となる。
☆リエージュ通り1番地 (1, rue de Liège, 9e)
入口の木の扉上部に嵌められた唐草模様とバルコニーの鉄格子の唐草模様が美しい。2階まで伸びる門飾りも品が良い。
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1, rue de Liège, 9e |
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5, rue de Liège, 9e |
☆リエージュ通り5番地 (5, rue de Liège, 9e)
外見的には貴族の館に似せて建てられたものと思われる。資料を探しても由緒を語るものは出てこない。
フランス語の慣用表現で「サン・ジストワール」(sans histoire)という言い方があるが、取り立てて「歴史的な逸話なし」という意味である。波風の立たない平穏な歴史で、何も語る必要がない場合に使われる。
ここの通りもそうした建物が多いので、もっぱら建築物ウォッチで街歩きを楽しむということになる。
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7, rue de Liège, 9e |
☆リエージュ通り7番地 (7, rue de Liège, 9e)
上の5番地と隣り合わせの建物で、こちらも由緒はわからない。現在はパーティ用の貸ホールとして使われている。
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10, rue de Liège, 9e |
☆リエージュ通り10番地 (10, rue de Liège, 9e)
通りの反対側の10番地の門飾りは、控えめながら、やや重そうな花房飾りが見られる。
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13, rue de Liège, 9e |
☆リエージュ通り13番地 (13, rue de Liège, 9e)
13番地の門飾りはユーモラスな動物の顔に見える。タヌキの太鼓腹かもしれない。1898年の建造、建築士はアントナン・フランドル(Antonin Flandre)の銘が見られる。
☆リエージュ通り18番地 (18, rue de Liège, 9e)
18番地の門飾りは非常に小さいので目立たないが、よく見るとタツノオトシゴのような半身人像が背中合わせに寝そべっている格好である。
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18, rue de Liège, 9e |