パリの街角散歩です。カタツムリのようにゆっくりと迂回しながら、そして時間と空間をさまよいながら歩き回ります。


2016年6月1日水曜日

散歩Q(1-3) タヴェルヌ・ド・パリ跡 Ancien emplacement de la Taverne de Paris(クリシー広場~ユーロプ界隈)

☆クリシー並木通り3番地 (3, avenue de Clichy, 17e)
《 タヴェルヌ・ド・パリ跡 》 (Ancien emplacement de la Taverne de Paris)
(c) Google Map Streetview
 3, avenue de Clichy, 17e

カフェ・ゲルボワからクリシー広場のほうに戻ってくる途中の3番地には、「タヴェルヌ・ド・パリ」(La Taverne de Paris)という居酒屋があった。マネや印象派の若い画家たちがこの辺りにたむろした時代から20年くらい後のことで、19世紀末から20世紀初頭のベル・エポック時代、この居酒屋は、「諧謔漫画家協会」(Société de dessinateurs humoristiques) と称する団体に所属する戯画作家、漫画家、風刺画家たちが集まる場所となった。

Jules Chéret - Fleur de Lotus,
affiche de Folies Bergère
Paris, Bibliothèque nationale de France (BnF)










その中心的な人物は、レアンドル、スタンラン、フォラン、ウィレットなどで、彼らは皆1850年代生まれの30代~40代の画家・漫画家たちで、機智にあふれかつ辛辣なユーモア精神を持ち合わせており、そこでは才気煥発な議論が飛び交った。

19世紀後半になって多種多様な新聞や雑誌が盛んに発行される時代となり、特に視覚に訴える挿絵や口絵が多用されるようになり、印刷技術の発達に伴ってカラー印刷物も大量に生み出された。右掲(→)のポスターは、当時絶大な人気を誇ったジュール・シェレ(Jules Chéret, 1836-1932)によるもので、彼はすでに大御所としての存在で、若い画家たちに助言を惜しまなかった。(LAI, PRR, Wiki)


Steinlen : Le bal du 14 juillet
Paris, musées de la Ville de Paris
Crédit Photo (C) RMN-Grand Palais / Agence Bulloz


雑誌等に掲載された彼らの作品は一見して大同小異の似たようなものとして捉えられやすいが、それぞれ作者の個性が発揮され、味わいも微妙に異なっている。

(←)左掲は、テオフィル・スタンラン(Théophile Steinlen, 1859-1923)の絵画で『7月14日の舞踏会』と題されている。革命記念日(いわゆるパリ祭)の夜にパリの街角で催されたダンスパーティの風景である。当時のクリシー広場でもこのような光景が見られたと思われる。スタンランはこうしたバランス感覚のある生活風景を多く描いている。

Léandre - En marge de Chantecler, La conspiration des nocturnes
La comédie parlementaire
Paris, Bibliothèque nationale de France (BnF)

シャルル・レアンドル(Charles Léandre, 1862-1934) はグロテスクな風刺画を得意とし、長い間にわたって新聞や雑誌で大胆な戯画が掲載された。(→)右掲は『シャントクレの余白に、夜の陰謀ー国会喜劇』と題された風刺画である。「シャントクレ」(Chantecler)[ あえて和訳すれば「鶏鳴」かも] とは、1910年に初演されたエドモン・ロスタンの戯曲のことで、鳥たちを擬人化した世界での権力抗争を描いたものである。レアンドルはそれを更にもじって当時の国会での論争を皮肉ったものと思われる。


Collection Jaquet : Dessinateurs et humoristes;
Willette 3 - Défets d'illustrations de périodiques
Pourquoi pas? @BnF Gallica

アドルフ・ウィレット(Adolphe Willette, 1857-1926) も雑誌のイラストで人気が高かった。(←)左掲のものは《クーリエ・フランセ》(Courrier Français)掲載の一連のシリーズ『女の気まぐれ』(裸と脱衣)(Les Fantaisies : Nus et déshabillés) の中の「もちろんよ!」(Pourquoi pas?) と題したイラストである。

日常ではまず起こりえない美女の蓮っ葉な行状を描いた作品がほとんどで、男性読者の目の保養となったのかも知れない。

(↓)下掲は、《巡査:「お嬢さん、気をつけて、霜焼けになるよ!」》

Collection Jaquet : Dessinateurs et humoristes;
Willette 3
Défets d'illustrations de périodiques
Le sergot - Méfiez-vous, mon enfant,
vous allez attraper des engelures.
@BnF Gallica
















フランス国立図書館(BnF)のガリカ電子図書館(Gallica) では、19世紀後半~20世紀前半における著名なイラスト画家たちの作品を膨大な雑誌から切り貼りして集めた《ジャケ・コレクション》(Collection Jaquet) を各人別に見ることができる。

http://gallica.bnf.fr/services/engine/search/sru?operation=searchRetrieve&version=1.2&collapsing=disabled&query=%28gallica%20all%20%22Collection%20Jaquet%20humoristes%22%29%20and%20dc.type%20all%20%22image%22%20and%20dc.relation%20all%20%22cb43742245x%22


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