パリの街角散歩です。カタツムリのようにゆっくりと迂回しながら、そして時間と空間をさまよいながら歩き回ります。


2016年7月14日木曜日

散歩Q(2-5) クリシー広場(再2)Place de Clichy (suite)クリシー広場~ユーロプ界隈

☆クリシー広場12番地 (12, place de Clichy, 9e)
 レストラン「シャルロ」 (Restaurant Charlot, Roi des coquillages)

 クリシー広場の方に引き返し、大通りの南側に渡る。通り沿いに立ち並ぶ建物の中で、12番地には海産物料理で有名なレストラン《シャルロ》(Charlot)がある。「シャルロ」は人名のシャルル(Charles)の愛称形であり、フランスでは名優チャップリン(Charles Chaplin)を指すことでも知られているが、苗字としてシャルロという人も少なくない。このレストランは、別名『貝類の王様』(Roi des coquillage) と称しているように、南仏を中心とした海産物の料理(特にブイヤベースbouillabaisse)を得意としている。また冬場には、生牡蠣を主体とした「海の幸盛り合わせ」(Plateau de Fruits de mer)を味わうために人々が押しかける。この店では客が普通の肉料理を注文する方が間違っている(とされている。)

店舗の内装もなかなか凝っていて、広々としたアールデコ調の雰囲気がある。建物の入口にある店の名前の看板にもアールデコの時代に流行した字体がそのまま使われている。建物上部に孔雀の羽を広げたような感じの果実の房らしい装飾が見える。この鳥は磯鴫(イソシギcharlot de plage)のつもりなのかもしれない。
(c) Google Map Streetview
 12, place de Clichy, 9e
Edouard Manet
Vue prise près de la Place Clichy (1878)
Dickinson Gallery, London & New York
Wikimedia commons


クリシー広場は意外にも多くの画家たちによって風景画として、あるいは生活風景の場所として描かれている。

(←)左掲はエドゥアール・マネ(Edouard Manet, 1832-1883)が描いた『クリシー広場からの眺め』(Vue prise de la Place Clichy) という作品であるが、晩年の同じ時期に描かれた『ラトゥイユ親父の店』(Chez le père Lathuille)に比べれば、絵具をたっぷり使って街角の風景をすばやい筆致で描いている。マネは画家としての活動と、日常生活の両方をこのクリシー広場を中心とした地域の中で過ごした。


◇パリ蝸牛散歩内の関連記事:
☆クリシー並木通り7番地 (7, avenue de Clichy, 17e)
《 ラトゥイユ親父の店跡 》 (Ancien emplacement du Restaurant, Chez le père Lathuille)
http://promescargot.blogspot.jp/2016/05/1-2-ancien-emplacement-du-restaurant-du.html






Paul Signac : Place de Clichy
The Metropolitan Museum of Art, New York
Photo (C) The Metropolitan Museum of Art, Dist. RMN-Grand Palais /
image of the MMA

新印象派・点描派の画家ポール・シニャック(Paul Signac, 1863-1935)もクリシー広場の目の前の通り沿いの建物にアトリエを構えていた。

(→)右掲の『クリシー広場』の絵にはモンセ―元帥の銅像を見通せる広い通りを点描法で描いている。しかし、点描画法はどうしても朝もやの淡い色彩としか感じさせないものである。


◇パリ蝸牛散歩内の関連記事:
クリシー広場~ユーロプ界隈(2-3)点描派シニャックのアトリエ跡 Emplacement de l'atelier de Paul Signac, pointilliste
http://promescargot.blogspot.jp/2016/06/2-3-emplacement-de-latelier-de-paul.html


Pierre Bonnard : La Place Clichy et le Sacré-Cœur, 1895

おそらくクリシー広場周辺の風景を最も沢山描いたのは、ピエール・ボナール(Pierre Bonnard, 1867-1947)ではないだろうか。
クリシー広場から少し東に入った路地のドゥエ通りに住んでいた彼の日常生活の場はこの広場周辺であった。(←)左掲は『クリシー広場とサクレ・クール寺院』という作品で、雨模様の天気でありながら広場のあちらこちらでくり広げられる市場や雑踏の風景をモンセー元帥の記念碑とともに遠景としてサクレ・クール寺院を描いている。親しみやすい絵である。彼は広場を題材とした連作も手がけている。

実際にサクレ・クール寺院が見えるのは広場の西側のバティニョル大通りからクリシー広場に向かって歩く途上であり、広場からさらにモンマルトルに近づくと建物に隠れて見えなくなる。


※参考サイトLink:「画家たちの見たクリシー広場」La place Clichy vue par les peintres(仏語)
http://france.jeditoo.com/IleDeFrance/Paris/18eme/place%20de%20Clichy.htm

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