パリの街角散歩です。カタツムリのようにゆっくりと迂回しながら、そして時間と空間をさまよいながら歩き回ります。


2017年1月2日月曜日

散歩Q(5-2) 画家ヴュイヤールのアトリエ跡 Emplacement de l'atelier de Vuillard, intimiste(クリシー広場~ユーロプ界隈)

☆アドルフ・マックス広場6番地 (6, place Adolphe Max, 9e)
《親密派の画家ヴュイヤールのアトリエ跡》 Emplacement de l'atelier de Vuillard, intimiste

(c) Google Map Streetview
 6, place Adolphe Max, 9e
広場に面した6番地には、親密派の画家として知られるエドゥアール・ヴュイヤール(Édouard Vuillard, 1868-1940)が最晩年の10数年を送った家がある。

目の前の小公園(ベルリオーズ公園Square Berlioz)を見下ろす絶好の家で、彼が40代の頃に描いた『ヴァンティミル広場』の装飾パネル画以来、この家に住むことが憧れとなっていた。

この家は、しばらくの間南西部バイヨンヌ出身のアカデミー派の肖像画家レオン・ボナ(Léon Bonnat, 1833-1922)の活動拠点だった。

◇パリ蝸牛散歩内の関連記事:
☆アドルフ・マクス広場(旧ヴァンティミル広場)Place Adolphe-Max (Ancien Place Vintimille)
http://promescargot.blogspot.jp/2016/11/5-1place-adolphe-max-ancien-place.html

Édouard Vuillard: Panneaux décoratifs
La bibliothèque et La table de travail
exposés au salon d'automne, 1905
Paris, Petit Palais, musée des Beaux-Arts de la Ville de Paris
Crédit Photo (C) RMN-Grand Palais / Agence Bulloz

ヴュイヤールの作風は「親密派」とか「内面派」と呼ばれるが、これは主義主張ではなく、フランス語で「アンティミスム」(intimisme)とか「アンティミスト」(intimiste)という、「内輪」とか「内向的」という意味の通り、専ら身近な家庭的な題材をいつくしみに満ちた視点で捉え、画面に表わした性向だと言われている。

(←)左掲は、1905年の「秋のサロン展」(Salon d'automne)に出されて評判を得た装飾画板『書斎』と『仕事机』で、平板的で地味な、曖昧な色調の室内で手仕事にいそしむ婦人たちの姿を描いている。

作家のアンドレ・ジィド(André Gide,
1869-1951)は当時の「美術雑誌」(ガゼット・デ・ボーザール Gazette des Beaux-Arts) に寄稿した「秋のサロン展を歩く」という評論の中でヴュイヤールの作品を大いに称賛している。

「彼は自らを心底から語っている。より直截的に作者と語り合っているこうした作品を私はあまり知らない。・・・その会話とは、彼が内緒話をするように本当に低い声で語り、相手がそれを聞こうと身を傾けるようなものなのだ。」
(Il se raconte intimement. Je connais peu d'œuvres où la conversation avec l'auteur soit plus directe. - - - Cela vient surtout de ce qu'il parle à voix presque basse, comme il sied pour la confidence, et qu'on se penche pour l'écouter.) André Gide : "Promenade au Salon d'Automne," Gazette des Beaux-Arts, Déc. 1905 @Gallica BnF


Vuillard : Démolition rue de Calais
Pau, musée des Beaux-Arts
Crédit Photo (C) RMN-Grand Palais / Benoît Touchard
☆カレ通り26番地 (26, rue de Calais, 9e)
 アドルフ・マックス広場3番地 (3, place Adolphe Max, 9e)
《画家ヴュイヤールの住居跡》 (Emplacement de domicile de Vuillard)

実は広場の東南角にあった建物にこの直前までヴュイヤールは住んでいたが、そこが建て替えのために取り壊されることになって、6番地に移ったのである。ここは角にあるため2つの住居表示がある。現在の建物の広場側3番地に記念銘板(Plaque)が掛かっている。珍しくも石板には彼の自画像の絵もついている。
「画家エドゥアール・ヴュイヤールはこの建物のあった場所に1908年7月から1926年9月まで住んでいた。」
« Le peintre Édouard Vuillard (1868-1940) a vécu à l'emplacement de cet immeuble de juillet 1908 à septembre 1926. »

*Wiki commons : Plaques in Paris, 9e arrondissement
https://commons.wikimedia.org/wiki/Category:Plaques_in_Paris_9e_arrondissement#/media/File:Plaque_%C3%89douard_Vuillard,_Place_Adolphe-Max,_Paris_9.jpg

彼はこの建物に愛着があったようで、新しい住居から見た古い建物の取り壊しの様子を(↑)「カレ通りの取り壊し」(La démolition rue de Calais)と題した何枚かの下絵に残している。



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